1章:「仕事って何だろう?」大学生の本音に迫る。(鳥光VS矢野)

★矢野浩二
1994年生まれ(20歳)
千葉県立八千代高校卒業、慶應義塾大学法学部在学
同大学非公認サークルKeiAll代表

赤点常連者として名高かった自分が慶應に入ったら面白いのではないか、という思い付きから勉強を始め、慶應義塾大学法学部に入学する。

単位を落とし続け1年が経過した。2年次になり、周りの友人が皆、”就活”という言葉をつぶやき出すのを多く聞くにつれ、自分の進路についても悩むようになる。
「このままただ就職して会社のために一生を捧げるだけの人生なのか…」
就職という大きなステップを前に自分の人生を考え始める。

 

鳥光:「矢野君は予備校で僕が教えていた学生だよね。それで、昨年慶応大学法学部政治学科に合格したわけだけど、はじめから志望校を慶応大学法学部に決めていたのかな?」

矢野:「いえ、最初は正直なところ大学入試のシステムすら分かっていませんでしたから、どこの大学がどう良いのか、悪いのか、そんな違いも分かりませんでした。とりあえず大学に行こうと思っただけなんです。まあ、東大、早慶上智みたいなブランド名だけは知っていましたから、そこを目指せばいいのかなあとかぼんやり思っていました(笑)」

鳥光:「あれ?早稲田、慶応にW合格するくらいだから、高校3年生の時に相当受験の準備をしてきていたのかと思ったけど、そうじゃなかったんだね?」

矢野:「はい。自分の高校時代はサッカー命で、部活に明け暮れていました。だから、受験勉強自体の開始が遅かったみたいですね。正直いうと、センター試験のシステムも何だかよく分からないうちに『受けた方がいいから』といわれて何となく受けただけで、あまり良い結果は出ませんでした」

鳥光:「そうだったんだ。部活命だったわけだな(笑)でも、今まで受験指導をしてきた僕なりの確信としては、高校時代に部活などに本格的に打ち込んでいた学生は、『勉強ができない』のではなくて『まだ知っていない・やっていない』だけであって、一年間浪人して全力で勉強すると、自分の思い描く道に進んでゆくことが出来る確率がとても高いという結果が出ているよ」

矢野:「そうなんですか。やはり、何事も目標に向けてどれだけ夢中になれるかというところに成功のカギがあるのかもしれませんね」

鳥光:「そうだな。当たり前のことなのかもしれないけど、結局人間は弱い動物で、楽な方に逃げてしまうからな。そこを耐えられるか否かが勝負どころなんだろうな」

矢野:「なるほど。これからもそのあたりは意識して大学生活を送ります(笑)」

鳥光:「そうだな。そういう意識を忘れないことが将来を大きく左右してゆくのかもしれないな」

矢野:「先生、自分たちのような若者?というか20代そこらの学生や、それ以下の年齢の人はいったい何を目標にして生きていったらよいのでしょうか?今の僕たちの周りを見ていると、全てがただ『就職』ということだけに目標が絞り込まれていて、そして、この若い大切な時期をそのためだけに捧げるみたいなところがあるような気がするんです。だけどそんなことなら、なんか生きている意味がないなあと思うんですよ」

鳥光:「なるほど、確かに君が言うことは確かだし、大学受験生を見ていてもその風潮は現実にあるよな。そして、それは学生だけでなく親も周囲の大人達も皆、大学に行くのは『良い就職を勝ち取るため』という思考にあまりにも偏りすぎているように思えてならないな」

矢野:「そうなんです。だから、大学だけではなく、『学校』というもの自体が一体何のためにあるのかなあ?と思えてきているんですよ」

鳥光:「ほお、それはまた随分根底というか、奥深いところに入ってきたな(笑)」

矢野:「いやいや、自分達大学生は、『いつの間にか大学生になっていた』という感じで、本当は人生に対する基本的なことを立ち止まってゆっくり、じっくりと考えたことがなかったんじゃないのかな。と最近考えるようになったんですよ」

鳥光:「そうだな。確かに今の日本では何となく義務教育から高校卒業までは初めからレールが敷かれていて、そのレールの上をうまく走ることだけが大切なことのように仕向けられているから、立ち止まって考えていてはいけないような風潮があるもんな」

矢野:「はい。だから、今回の先生からのこの御提案はとてもいいきっかけになったんです。たぶん若いうちは、人生の指標となるものを模索しながらも多くの失敗を重ねて、そこから『成功』ということも知ってゆくんじゃないかと思うんです。何が善で何が悪なのかも分からないような不安定で常に変化し続ける世界を手探りで生きていく。こうした世界の道案内として学校があるんじゃないのかな。なんて考えたりもするんですよ。」

鳥光:「ほお!矢野君、随分大人になったなあ(笑)」

矢野:「先生、茶化さないでくださいよ。高校時代と違って、大学生になってからはちゃんと勉強してますから(笑)」

鳥光:「そりゃすまない。茶化すつもりじゃなかったんだけどな(笑)。でも、実際に学校に行ってるからこそ勉強して色々なことが見えてきているんだよな」

矢野:「はい。確かにそうなんですが、学校ってただ決まりきった勉強だけを教えるものではなくて、世界に出てもしっかりと生きていける『教養』みたいなものを身につけるための教育を行う場じゃないかと思うんです。確かに先生がさっきおっしゃったように、高校を卒業するまでは何となくレールが敷かれていて、それがあたかも『案内役』としての『学校』なんですよね。でもその案内役は『人生の指針』についてはほとんど無口で、結局3年間の中ではその先の指針は語られないんです。そして、高校卒業と同時にそういった案内役は突然いなくなり、『就職』や『大学進学』など数多くの選択肢から自分の人生の順路を自分一人で築いていかなければならなくなるわけですよね」

鳥光:「なるほど、確かにそういうことになるね。しかも、高校卒業まではレールの上を走るだけだから、決まった景色しか見ない。だから、この先の人生の選択肢だって何もイメージが湧いてこないのかもしれないな」

矢野:「早いうちに夢を見つけた者は他人よりはやく準備をして、それが必ず成功することはないにしても、それに向かって邁進する。だけど、多くの若者はうまく夢を見つけることも出来ないでいる。そして、ただなんとなく大学に行ってその場が楽しめればいいかなあ、という感じで、ただのうのうと時を過ごしているって感じがするんですよ」

鳥光:「そうなんだ。俺たちの頃はクラーク博士の『青年よ、大志を抱け!』ってな言葉に触発されて、『大学に行くのは大志を果たすため!』みたいなところがあったけどな。矢野君自体はどうなんだろうか?」

矢野:「はい。自分も、こんな世界でいったい何を頼りに生きていったら良いのだろうか?と常に疑問を抱えて生きてきたうちの一人なんです。とはいうものの、こんなわけのわからない世界でも指標になりうるものがあるって気が付いたんですよ」

鳥光:「ほう、何か悟りを得たか!(笑)」

矢野:「いやいや、悟りというわけではないのですが、『これかな!』と思うにいたったことがありまして、それは、『自己の欲望』といことなんですよ」

鳥光:「あれ、悟りが欲望というのはまた凄いな(笑)。それは一体どんな考えなのかを聞かせてくださいよ」

矢野:「はい。例えばですね、真夏の暑いところにいれば『クーラーの効いた部屋でゴロゴロしたい』とか、真冬の寒空の下にいれば『ストーブの前で丸くなりたい』とか、こうした欲望は自分にとっての正当性を常にもっていると思うんですよ。だから、ただ単に自分の欲望や利益を追い求めることが最良の帰結を生むのではないか、という考えを発見したんですよ」

鳥光:「なるほど、『正当性』という言葉の定義にはどこまで添うのかは分からないけど、人間は欲望の塊だからな(笑)」

矢野:「そうなんですよ。先生がおっしゃるように、人間は欲望の塊だからこそ、これだけの不安定さを孕む今の世においても、良い悪いは別として、『自分の欲』という確固たる指標があれば道に迷うことはないと思ったんですよ」

鳥光:「そうか、目標とは『自己の欲望を満たすことと得たり!』って感じなんだな。だけど、皆の目標が『欲望』だけになったら混沌としてしまうよな」

矢野:「はい、その通りだと思います。だから、自分の欲を満たすことだけが本当に人生の目標であり、全てかと言われると疑が残る部分もあるんですよ。

鳥光:「まあ、確かにそうだな。それじゃ、君が付け足して考えることは一体何なんだい?」

矢野:「はい。『人間は一人では生きていけない』などとよく言われますが、確かに私たちは多くの人々とかかわりあって生きていますよね」

鳥光:「そうだな。例えば、自分は部屋に閉じこもって人とは一切関わらないとか言いながら、その部屋は親が造ってくれた家の一部だったり、ご飯も自室で一人で食べるといいながら、その米も農家の人が作ってくれたものだったりして、結局人間は一人では生きてゆけないんだろうな」

矢野:「そうですね。だから、こうして自分とかかわりのある人々をないがしろにして自分の欲望だけで生きていくことで果たして本当の幸せは得られるのだろうか、とも考えるわけですよ。そこで、さらに考えてみたんです」

鳥光:「ほう、だんだん深まって行くな(笑)。それで、どう考えたんだい?」

矢野:「はい。『他人のためになることをすれば、巡り巡って自分のためになる』などという考え方もよく聞きますよね。これも裏を返せば、他人の利益と自分の利益は表裏一体で、自分のためになることをすれば巡り巡って他人のためにもなるのではないだろうか、と思ったんですよ」

鳥光:「それも分かる気はするんだけど、例えばどういうことだい?」

矢野:「そうですね、例えば身近なところだと……。そうだ、大学受験を例にとってみますね。A君が良い大学に受かりたいという欲求を満たそうとしますよね。そうすると多くのライバルを蹴落とすことになります。だけどその結果として得られる『合格』は単に自分がうれしいだけではなくて、それを見守る家族や、応援してくれている友達にも幸福(利益)を与えることができると思うんですよ」

鳥光:「そうだね、特に今の世の中では『受験戦争』だとか、『子供の心が歪む』とか、自分たちもその道を通ってきたから今があるはずなのに、本当におかしなことを言う人々が多くいるよな。実際、受験の場合は人を蹴落とすわけではなくて自分自身の心を律して努力して、それに勝った結果の合格だから、悪く言われるものではないはずだしな」

矢野:「はい、自分もそう思います。だから、お金を稼ぐということ、つまりは『仕事ってなんだろう?』というこのテーマからすれば、働くということにおいても、自分が『お金持ちになりたい』という欲求を満たすために行う製造、販売、サービスが、ある特定の人の不便さを軽減したり、誰かに恩恵を与えることができているんじゃないかって思うようになったんですよ。こうした自分の利益と他人の利益の相関関係を考えると、『仕事ってなんだろう?何のために仕事をするんだろう』という問いには、『自分の欲を満たすために人生をいきてみるため』という僕なりの答えが出てきたんです。

鳥光:「ありがとう。君なりに考えた『仕事ってなんだろう』に対する答えをまた皆でシェアしてゆけるようにしよう」

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